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舞踏会の手帖の映画のレビュー・感想・評価

舞踏会の手帖(1937年製作の映画)
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喜劇か、悲劇か。

幻想的な冒頭の場面からラブロマンスを想像するけれども、実は、内容は滑稽といっていいようなもの。マダム・クリスティーヌは青春の追体験を望んで、かつて自分を愛した男性たちを訪問するが、ことごとく見当違いなことに。狂った母親に追い出され、ラマルティーヌの詩を愛していた文学青年は小悪党に成り下がり、才気溢れるピアニストだった男性は神父になっていて、山岳ガイドはクリスティーヌを放置して山を優先。大臣を志していた野心家の青年は今や太っちょ町長。神経衰弱の闇医者の妻に追い出されるわ、ろくなことがない。

さて、故郷の町で思い出の舞踏会に再び参加することに。ところが、美しかったはずのダンスホールは万国旗が飾られていて安っぽい雰囲気。「あれ、こういう雰囲気だったかな……おかしいな」と思いつつ、「あなたを一生愛します」とささやいてくれた昔の男性の声を思い出して意地でもロマンチックな雰囲気に浸ろうとするクリスティーヌ。ところが、床屋のファビアンが「ああ、それ、僕が言ったんだよ。覚えてる」と。もう、ガーンという感じ。

でも、これよくわかりますよね。青春の崩壊は悲劇か、喜劇か。多分、喜劇的な文体で語られるからこそ、悲劇の度合いが増すのでしょう。意外かもしれないけど、こういう滑稽な色調の中に人生の真実が含まれているものなんでしょうね。
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