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地獄門のKientopp552のレビュー・感想・評価

地獄門(1953年製作の映画)
4.0
 本作のストーリーは、はっきり言って、三流とまでは言わないが、二流である。その意味では、本作の音楽を担当している芥川也寸志の父親、龍之介が1918年に書いた短編『袈裟と盛遠』の方が、心理主義的解釈で余程面白い。(青空文庫のサイトで手軽に読める。)

 それに対して本作のスタッフがすごい。監督が、『狂った一頁』(1926年作)で日本の無声映画を世界のアヴァンギャルドのレベルに引き上げた衣笠貞之助、その衣笠と終生のコンビを組んだキャメラマン杉山公平(吉村監督作『源氏物語』で1951年にカンヌ国際映画祭撮影賞受賞)、助監督があの三隈研次、色彩指導・衣裳デザインが、戦前から色彩の標準化を提唱していた洋画家の和田三造、技術監督が、キャメラマンとしてカラー撮影の草分け存在となり、1952年には渡米して色彩技術を研究してきていた碧川道夫という錚々たるメンバーであったのである。

 こうしたメンバーを揃えたのも、本作が日本初のイーストマン・カラー作品として、策士の大映社長永田雅一の、「鶴の一声」の下、製作されたからである。それは、イーストマン・カラーの濃厚な色彩だけではなく、平安朝の王朝絵巻を活動写真化したような、伝統的な和色や中間色がきめ細かに映像化される必要があったからである。

 そして、その「挑戦」は見事に当たり、本作は、カンヌ国際映画祭では、パルム・ドール賞の前身にあたるグランプリ賞が、アカデミー賞では、外国語作品のための名誉賞と衣裳デザイン賞とが、ロカルノ国際映画祭では、金豹賞が授与された。色彩技術監督の碧川は、1954年度文部省芸術祭文部大臣賞を、現像を担当した東洋現像所は、日本映画技術賞を獲得したという具合であった。拍手!
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