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惑星ソラリスのmimozaのレビュー・感想・評価

惑星ソラリス(1972年製作の映画)
4.0
タルコフスキーの映画を「ノスタルジア」、「鏡」、「サクリファイス」、「ストーカー」、今回の「惑星ソラリス」の順に観てきて今までの作品と少し印象が違う感じがした。

途中まで「これは直球な感じの“愛”がテーマ?」と思ったけれど、後半じわじわと主人公の複雑な心理描写が押し寄せてくる。

母親の回想シーンで冬の小高い丘が出てくる。図書室に飾られているブリューゲルの「冬の狩人」と景色が重なる。母親の近くには幼い頃の自分もいるが、2人の距離が遠く感じる。
幼い子の目から見た、近くにいても遠い存在の母親だ。
「冬の狩人」は私の好きな絵だ。寒い地域で暮らす人々の、冬の日のひとこまがのどやかに描かれている絵だが、映画のなかでは前方の丘の上から、町で冬遊びを楽しむ人々を見下ろす狩人の姿と母親が重なって見える。

ソラリスの海からは、人間の潜在意識を掘り起こして物質化したものが現れる。ここでは人間の姿で現れているが、それは「人間の良心の現れではないか」という。それがラストにつながっていくのか。

とても難解で驚きのラストだが、バッハの『コラール「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」』がテーマと合い物語に深みを与えている。
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