ともぞう

長屋紳士録のともぞうのレビュー・感想・評価

長屋紳士録(1947年製作の映画)
3.4
時代とは言え、親と逸れて付いて来た子供を押し付け合うだけで、誰も警察に連絡しようとしない。物語はシンプル。最初は邪険に扱っていた子に愛情が湧き、だんだん可愛くなってくる。自分の子供として育てようとした所で実の父親が現れる。子供がいなくなった喪失感で泣く飯田蝶子。もちろんホロリと来るが、後半に飯田蝶子が話し過ぎか。もう少し抑えた演出の方が、よりグッと来たんじゃないかな。

〈あらすじ〉
東京の焼け跡に復興の家がぼつぼつ建ちはじめ、昔なじみの顔も揃ってきた。数年前夫を失い、続いて一子をも失ったおたね(飯田蝶子)は、たった1人で昔通りの荒物屋を開いている。ある日、彼女の家の裏に住む占見登竜堂先生(笠智衆)が一見すると戦災孤児のような少年の幸平(青木放屁)を拾ってきた。しかし、自分で育てる力のない登竜堂はそれをおたねに押しつけた。おたねは内心甚だ迷惑に思ったが、別にどこへ行かす宛もないので仕方なく一夜だけ泊めてやる。そして翌日、近所の家々を頼んで歩いたが、どの家庭を見ても、1人暮らしのおたね以上に幸平を養うのに適した家はなかった。おたねは少年がかつて父と共に住んでいたという田舎の町へ、幸平を連れて出かけたが、求める家は見当らなかった。いまはおたねも幸平を捨てる訳にもゆかず、やむを得ずまた自分の家に連れ戻った。そして2人の生活が続き幸平の少年らしい仕草を見ているうち、おたねは自分の失った愛児の面影を想い出さずにはいられなかった。近所のどの家庭を見ても、皆子供を中心に幸福そうである。子供の良さは誰の子も同じではないか。おたねはついに幸平を我が子として育てようと決心する。やがては学校にも上げてやらねばなるまい。幸平もおたねに懐いてきた。しかしある日不意に幸平の父(小沢栄太郎)が訪ねて来た。彼は東京へ仕事を求めに来た時、幸平とはぐれてしまったのである。おたねは礼を言って去る親子を見送って、少年の本当の幸福をしみじみと願った。
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