ボブおじさん

花嫁の父のボブおじさんのレビュー・感想・評価

花嫁の父(1950年製作の映画)
4.0
私ごとになりますが、来月娘が結婚式を挙げる。嫁いだのは2年前だが、例のコロナの影響でハワイで予定していた挙式が延期に次ぐ延期でようやくこの度、結婚式を挙げられることとなった😊

既に家を出て2年が経つので寂しさもひと段落を遂げたところだが、いざ結婚式となるとどんな心境になることやら。この古典的名作を久し振りに見返して心の準備をすることとした。

一人娘を嫁に出す父親の複雑な気持ちをユーモアを交えながら描く父と娘の物語。名優スペンサー・トレーシーが、怒ったり、笑ったり、涙を流したりと父親の心理を巧みに演じている。当時18歳だったエリザベス・テイラーが輝くばかりに美しい。

アメリカの諺によれば、父親にとって息子は結婚するまでが息子だそうだが、娘は一生娘だそうだ。

娘にとって父親とはどんな存在だろう。この映画で父親は、出掛けるところと帰ってくるところは映っているが、会社で何をやっているかは最後までわからない。それでいいのだと思う。

70年以上前のアメリカの映画だが、古今東西娘を嫁がせる父親の心境は案外変わらないのかも知れない😅


1991年にはスティーヴ・マーティン主演で「花嫁のパパ」としてリメイクされた。こちらは既にレビュー済。



〈余談ですが〉
スペンサー・トレイシーといえば、米アカデミー賞主演男優賞ノミネート9回、ゴールデングローブ主演男優賞ノミネート4回を誇るハリウッドの名優。37年の「我は海の子」と38年の「少年の町」では、2年続けて主演賞のオスカーを獲得している。

本作でのエリザベス・テイラーの父親を始め、「少年の町」のフラナガン神父、「老人と海」の孤独な漁師、「ニュールンベルグ裁判」の老判事など、一徹で誠実な男性像を演じ、アメリカの良心とも言われた。

スターと呼ばれる人種には2種類存在する。生まれながらに光り輝き最初からスターとしてスクリーンに登場するタイプ。

一方は、アクターとしてデビューして実績を積み重ねながら気がつけばスターになっている俳優。説明するまでもなくスペンサー・トレイシーは確実に後者だ。一方ライバルのクラーク・ゲイブルは、典型的な前者だろう。

身長は165cm(諸説あり)およそスターとはかけ離れた風貌のこの男は、若い頃はチンピラやギャングの役が多かった。下積みを経て徐々にその実力を認められた彼は、1930年代半ばから頭角を表し遺作となった1967年「招かれざる客」(英国アカデミー主演男優賞)までアメリカの父親を演じた。
※ちなみに「招かれざる客」は、ジョーダン・ピール監督の「ゲット・アウト」の元ネタでどちらもレビュー済。

個人的に一番印象に残るのは、映画化不可能と言われた(老人が1人で舟に乗っているだけの話)ヘミングウェイ原作の「老人と海」だが、スピルバーグが子供の頃に一番憧れていたのが「我は海の子」のスペンサー・トレイシーだそうだ。喧嘩が絶えず16歳で両親が離婚したスピルバーグにとってスクリーンの中のトレイシーは理想の父親に見えたのかも知れない。「フェイブルマンズ」を見て、その話を思い出した。

スペンサー・トレイシーの最期を看取ったキャサリン・ヘプバーンは彼のことを「男が男だった時代の人だった」と評している。


〈さらに余談ですが〉
この映画で娘役を演じたエリザベス・テイラーは生涯で7人の夫と計8回の結婚をしている。

果たして彼女の実の父親の心境やいかに😅