彦次郎

江戸川乱歩の 陰獣の彦次郎のレビュー・感想・評価

江戸川乱歩の 陰獣(1977年製作の映画)
3.5
かつての恋人から脅迫される人妻小山田静子から相談を受けた探偵小説家寒川がライヴァルである探偵小説家大江春泥を追う江戸川乱歩原作のミステリー。エロ要素テンコ盛りや話がまるきり変わる映像化にしては珍しく原作に準拠しているほうです。その原作は連載された雑誌新青年が異例の増刷を行うほど評判になり自作に厳しい乱歩も認める傑作中篇です。現実の作者自身をトリックに使った前人未到(先例があったらすいません)な斬新さと行間からあふれ出る不気味さは今読んでも古びることはありません。
さてその映画化ですが元々中篇なところを引き伸ばしている印象。また原作では大江春泥書いた作品を寒川が書いたことになっているような変更は静子の影響としても少し釈然としませんでした。しかし映像化に際して大江夫人についてはミスリードをさせるようにしているのは良い工夫でした。碁石の音が鞭音になっていたり、船着場でのケチトボケ婆とのコントがあったり、クライマックスが赤い部屋になっていたりとオリジナル要素も悪く無かったです。
詳細は割愛しますが豪華俳優陣が出演、主演はあおい輝彦でちょっと違和感がありましたがやはり声(アニメだと矢吹丈役で有名)が印象的。静子を演じた香山美子はイメージ通り且つ裸身が目の保養になりました。
音楽は鏑木創。後に土曜サスペンス劇場の『江戸川乱歩の美女シリーズ』でも音楽を担当されるのは奇縁(始まったのは同時期)というべきでしょう。
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