たむ

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生のたむのレビュー・感想・評価

3.3
総集編と聞いた時のイメージとは大きく異なるのが、本作の凄いところであり、厄介なところです。
テレビシリーズを全て観られないから、総集編を観よう、そんな人々の近道を決して許さない難解さ。
テレビシリーズの総集編といえば、ガンダムなら三部作で描きました。
エヴァは話数が少ないとはいえ約80分。
しかも当初の予定では、完結編と二本立て上映。
初公開時には『Air』の前半部分でクリハンガーとなる事で次に繋げたものの、今となっては160分で全てを繋げた旧劇場版がある中で、本作の価値は下がってしまったように思います。
物語の構成と4人のカルテットの意味に関しても、シリーズ最大級の難解さを誇っていますし、時系列を並び替えるのですら、困難極まりないです。

そんな中で本作を考察するとしたら、アスカの存在のDeathからのRebirthに至るテーマの追求が最も特徴的です。
この旧劇場版で完全に物語の主人公はシンジからアスカであった事が、というよりもシンジから主役を奪い取ったと言ったら良いかもしれません。
オープニングのセカンドインパクトの理由がついに明かされると物語は終わりから始まりへ向かい、時間軸は交錯。
新作カットが入るのは、総集編の良いところですが、殆どがアスカのもの。
徹底的に追い詰められ、深い絶望の中へと落ちていくキャラクターたち。

精神分析的に凄まじいトラウマを背負っているアスカに作者も興味が移ったことを確信させる心が汚されるシークエンス。
潔癖からのその展開はショッキングであり、後に彼女にシンジが救いを求めるが拒絶していく展開の伏線にもなっています。

そこからのRebirthへ。
あそこで終わっていれば、ある種のカタルシスもあったかもしれませんが、エヴァシリーズはそれを許してはくれないのです。
それについては、『THE END OF EVANGELION 』で考えて観たいと思います。

あと本作の重要な価値は『魂のルフラン』が流れることです。
あの歌詞こそ、エヴァの本質を突いていますね。
たむ

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