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FAKEのouckyのレビュー・感想・評価

FAKE(2016年製作の映画)
4.3
最初、佐村河内氏のアラ探しばかりして見てました。コイツはやはりペテン師で本当は耳が聞こえるのでは?でも、段々と彼の人柄と献身的に支える奥さんの姿、謎の飼い猫などに心が奪われていきます。理由は分かりません。やはり、監督が語ってましたが映像になる空間なんですよね。この映画、「善と悪」、「嘘と真実」を見出すものではありませんでした。

僕はプロレスが大好きで、会場にも観戦に行ったりします。でもプロレスが八百長か否かなんて、野暮な事は申しません。確かにブック、アングルなど言われる筋書きはそこに存在するのかもしれません。しかし、マットの上で戦う姿は真実です。その、試合を観て人々は声を枯らす程の声援を送り、時に涙し、時に歓喜します。でも、プロレスは自分達からそれが筋書きのあるドラマだとは決して言いません。そこには「ワンダー」な空間が存在するだけなのです。八百長や試合の勝ち負けではありません!「ワンダー」なのです!

何か話がプロレス論になってしまいましたがこの、「FAKE」を観て「ワンダー」な空間を感じてしまいました!佐村河内氏自体、設定なんですね。

ただ、やはり商売をする上で「ゴーストライターがいる」「耳が聞こえない」「歩くのが困難」「左手はもう使い物にならない」など紛れもない嘘や人々の同情を買うような行為は許されないでしょう。
また、障害者を食い物にする事も許される行為ではありません。まぁ、佐村河内氏が障害者を食い物にしてるという訳ではありませんが…。行き過ぎた過度な演出に歯止めが利かず、坂道を転がり続けてしまったのかもしれません。まぁその辺りは本当、本人しか解らない所なので何とも言えないですね。

インタビューの中で監督は、「森達也こそ一番のFAKCかもしれない」みたいな事を言ってます。ドキュメンタリー映画は完全な真実では無く、実際に起きてる事象を切り取ったものなんですよね。しかし、その切り取り方によっては黒いモノを白くみせたり、白いモノを黒くみせたり、はたまたグレーにする事も可能です。見終わった後、本当その辺りを痛感されられます。やはりこの監督、切り取り方が面白い!
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