tacos

FAKEのtacosのレビュー・感想・評価

FAKE(2016年製作の映画)
3.5
忙しくて映画が観れない昨今、久しぶりに友人から勧められて観ました。

終始演技をしている佐村河内夫妻。なにが問題なのかわからないまま大きくなってしまった渦中のドキュメンタリー。

映画は、善悪をジャッジしようとして観ると揺さぶられるようなつくりになっている。観る人が、佐村河内は善なのか悪なのかとその結論を出そうとすると、迷宮に入っていくようなつくりになっていた。

人を善か悪かひと言で片付けることは危険だと思う。
善ならばウソをついたっていい。
ウソは悪である。
善ならばウソをついていないでほしい。
ウソをついていてもいいから、ウソをついていたと教えてほしい。
このどの気持ちにも結論を出さない映画になっていた。

事実が段々と不明瞭になってきた時代において、世の中は、なんとか善悪で判断しようと躍起になっている。そして世の中の風潮は善悪を加速させることによって閉塞感を作り出している。そんな善悪が価値基準となっている時代に入り込んで仕事をしていた佐村河内が、同じ空虚な価値基準によって世間から断絶されるのは面白い構図だった。

何にせよ、善悪ほど曖昧で危ういものはないと思う。日本には無宗教な人が大半な分、価値基準を感情に訴えてくる善悪に求めがちなのかなと思う。事実が見えにくく、自分なりの真実を導きにくい今、善悪に頼って、それを何かの価値や判断の基準にしようと過度に求めてしまう構図は危険だ。

世間のジャッジによる閉塞感がぎゅっと集まったポイントを撮影したドキュメンタリーで、出口のない閉塞感に夫婦が閉じ込められたような映画だったけど、日本全体が同じジャッジーな目に晒されているという危険に気づかないといけない。

個人的には、ねこ🐈がかわいいかったのが印象的でした。
tacos

tacos