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僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.のodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【材料でもっている映画】

材料で何とかもっている、という映画ですね。

現代日本でのうのうと暮らしている医大生が、郵便局でふと目に留まったチラシをきっかけに、カンボジアに小学校の校舎を作ろうという運動を始める。実際にあったお話をもとにフィクションも付け足して映画化したようです。

主人公たちがカンボジアに出かけていって、歴史も含めその実態を知る、というところが、やはり迫力。この部分でこの映画は救われています。

ただ、映画としてみると、もう少しうまく作れなかったのかなあ、という気もします。私立医大に通えるってのは、日本の中でも経済的に恵まれた層でしょう。だから、カンボジアの子供たちとの落差は平均的な日本人以上に大きいだろうと。私はそのことを批判したいのではなく、映画として作ろうとするなら、第三者としてそういう部分を客観的に捉える必要があろうだろうと言いたいわけなんです。たんに日本の若者の現代風俗描写で済ませるのではなくてね。お金の出入りとか、誰が会計でどういうふうにやっていたかとか、そういう基本的な部分ももっと丁寧に描いたほうがいいと思う。

いちばん気になったのは、カンボジアで貧しい男の子を励まして、しかし男の子がせっかく作った学校に行けないのを何とか行けるようにするという部分。ああいうふうに簡単にいくものですかね。日本でも、明治時代に学制が敷かれて義務教育が始まったとき、それに対する批判がかなりあった。なぜって、農家(当時の日本では多数が農家でした)では子供は大事な労働力であって、その労働力が義務教育によって奪われたら農家としてやっていけなくなるからです。だから明治の頃はせっかく学校の校舎を作ってもそれが破壊されたりしたんですよ。教育はたしかに個人の実力を高め、ひいては社会や国全体の力を向上させるものですけれど、そのことを誰もが認識しているわけじゃない。短いスパンで見れば、教育は生きていくための稼ぎを奪うものでもあった。その辺の事情が、現代のカンボジアでどうなのか、知りたかったんですけどね。
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