尿道流れ者

狂った野獣の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

狂った野獣(1976年製作の映画)
4.0
京都駅行きのバスに銀行強盗に失敗した二人の男が乗り込み、バスジャックをする。止まることなく走り続けるバス、恐怖に打ち震える乗客に誰もが息を飲む展開になると思いきや、映画館には笑いが溢れた。

乗り合わせた乗客はチンドン屋に不倫カップル、子供に女優の卵にババア、ジジイ、土方、風俗嬢、そして我らが渡瀬恒彦御大である。強盗犯の存在により騒ぎ立てる乗客、それぞれが各々のやり方で騒ぐ。それを抑えるために強盗犯も騒ぐ、その全てをただ不敵に見つめる渡瀬恒彦。この存在感に既に笑ってしまう。キャラの立ちが抜群でそのベタだが安定感のある掛け合いにはしっかりと笑わされる。なかでも抜群に良いのが川谷拓三である。女々しく弱気で殴られっぱなし、時には奇声を上げ、最終的には故郷の歌を歌い出すしまつ。そのテンション高めで情緒不安定な演技と話っぷりは桂朱雀を見ているようで笑いながらもジーンとくる。
笑いはドンドン高まり、星野じゅんの演技の下手さや声質の悪さもあだとはならず笑いに繋がる。室田日出男の残念な役回りと残念な死、翻弄される警察の馬鹿っぷりなど外すことはない。

カーアクションシーンが助長で刺激的では無い場面が多かったがコメディとしてダレることは無く最高に面白い。オチまで綺麗に暴走しきっていた。