アキラナウェイ

聖なる嘘つき/その名はジェイコブのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.8
「ジョジョ・ラビット」や「ライフ・イズ・ビューティフル」に似た悲喜劇。

一際おもしろおかしく描かれた方が、一層悲しみが深まる。笑っているのに悲しげな、ロビン・ウィリアムズその人の様だ。

第二次世界大戦中のポーランド。ナチスの占領下にあったユダヤ人居住区「ゲットー」に住むジェイコブ(ロビン・ウィリアムズ)は、ドイツ軍司令部でラジオ放送を耳にする。理髪店のコワルスキーにラジオで聞いた情報を伝えてしまった事で、ジェイコブがラジオを隠し持っているという噂がゲットー内で持ちきりになってしまう。

ソ連軍がすぐそこまで来ているらしい!
終戦を迎えるのも時間の問題らしい!

外部からの情報が遮断されたゲットーに於いて、ラジオは希望そのもの。ジェイコブからラジオの情報を聞き出そうと多くのユダヤ人が、彼を毎日の様に取り囲む様になる。

後に引けなくなったジェイコブは、皆の希望を絶やさぬ為に嘘を重ねる様になるが…。

いつ、貨物列車にぎゅうぎゅう詰めに乗せられて、強制収容所送りになるかわからない。今日かも知れない。明日かも知れない。その恐怖を感じながら、彼らが今日を、明日を生き抜く為には、希望が必要だったんだ。

本当はラジオなんて持っていないのに。
ジェイコブの優しい嘘が、同胞の生きる力となる。

ジェイコブにはもう一つ秘密があった。

彼は、貨物列車に乗せられた両親と別れ、身寄りのないリーナという少女を自宅に匿っていた。

リーナにラジオが聞きたいとせがまれたジェイコブが、仕方なく披露するラジオ放送のモノマネが素晴らしい!!

それは、「グッドモーニング、ベトナム」のDJ役や、「アラジン」のジーニーのアフレコを彷彿とさせる、ロビン・ウィリアムズだからこその天賦の才。

リーヴ・シュレイバーや、アラン・アーキン等、ゲットー内の住人達も個性豊かでわちゃわちゃしているのが楽しい。

そう、楽しいんだけど、最後は…。
涙。ただただ静かに涙が頬を伝う。

あまり知られていないホロコーストものだけど、重いのが苦手な方にはおススメの逸品。