りっく

すかんぴんウォークのりっくのレビュー・感想・評価

すかんぴんウォーク(1984年製作の映画)
3.7
80年代に量産されたアイドル映画は、アイドルに虚をたどたどしく演じさせ、隠しきれない実を滲み出させるタイプと、アイドルそのものの実在感で駆け抜けるタイプに演出法が大きく分けられると思う。本作はまさに吉川晃司映画であり、大森一樹は後者の演出に徹し、大柄で大胆な一挙手一投足を逃すまいと追いかける。

冒頭で広島から上京する新幹線のアナウンスが入るにもかかわらず、バタフライで海から現れるという度肝を抜かれる登場から蟹しか食わない蟹江敬三が出てくるあたりまでポップなトンデモ映画を覚悟させるが、そこから芸能界内幕モノとして陰影を濃くしていくのが見応えたっぷり。

やりたい音楽と売れることの乖離、レコード会社の思惑、夢に向かって友と過ごした下積み時代が逆に夢を掴んだ自分を阻むスキャンダルとなる虚しさ、ステージ上で毒舌パフォーマンスを見せる山田辰夫の熱気、脱ぐしかない女優の悲哀。この手の映画で押さえるポイントはしっかり描きつつ、そのどれもが真に迫っているのは、大森一樹のアプローチの正しさだろう。
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