雨のなかの男

或る夜の出来事の雨のなかの男のレビュー・感想・評価

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
-
U-NEXTで鑑賞。とにかく映像が綺麗で驚いた。窓に打ち付けては流れる雨や、きらきらと陽光を反射する川、真夜中に煌く涙がとにかく美しい。後年のカラー映画のコッポラの『雨のなかの女』やアルトマンの『雨にぬれた舗道』にはない魅力を感じた素晴らしい雨映画だと思う。
かの有名な「ジェリコの壁」も見ることができて良かった。スクリューボール・コメディにおける男女の意地の張り合いと映画の法律を可視化したこの薄くて分厚い壁がなんとももどかしく、おかしい。

ロード・ムーヴィー(前史)の考察において本作の名前を度々目にしていたが、働く乗り物が大集合している点は面白い。船、車、飛行機、列車、最後のヘリ…ひ行機?なんだあれ。

二人とも現実と地続きではない、海の彼方に自由や夢を期待している点が面白い。世間知らずのお嬢さんは現実に否を突きつけんと水中にタイブし、あくせく働く男は離島での生活に夢を見るか、現実は果てしない陸地での苦痛の移動が続く。その状況で恋敵は飛行機を使ってカッコつけて降りてくるから、この「ズレっぷり」が面白い。
終盤のエリーの親父の「やっちまったけど、まあいいか」という表情で葉巻を吹かし、とぼける場面は屈指の喫煙場面だと思う。
雨のなかの男

雨のなかの男