YuikiKoiwa

バンド・ワゴンのYuikiKoiwaのレビュー・感想・評価

バンド・ワゴン(1953年製作の映画)
4.0
ミュージカル最高峰とも名高いバンドワゴンをついに鑑賞。

近所のレンタルショップには見当たらず、半ば諦めていた所に突然のプライム入り!
最近名作ミュージカル作品のプライム入りが多くて嬉しい限り!

本作はコメディ要素よりもドラマ重視の展開。

アステアは落ち目のミュージカルスターという役どころで、本人のキャリアにも重ねたキャスティング。(むしろ彼のダンサー人生は超ロングランそのものなのだが!)

周りを囲むのは旧来の仕事仲間、若手実力派バレエダンサー、カリスマ演出家といった面々。

てんでんばらばらの彼らが新作作りに乗り出すが…といったストーリー。

一流のエンターティナーたちが悩み、ぶつかり、葛藤しつつ、最高の作品を作り出すチームとなっていく。

デフォルメされているとはいえ、ここで描かれる産みの苦しみには心震わせるものがある。

ミュージカルシーンも多彩で、トニーのテーマソングby myself、アステアのタップshine on my shoes、主役陣勢揃いのthat’s entertainment、劇中劇のgirl hunt balletと終始音楽が畳み掛けてくる。

中でも素晴らしいのはアステア=チャリシーのdancing in the darkで、方向性の違いに悩む2人が夜の公園でダンスを交わし、心が通い合うシーン。
セリフや歌詞はなく、踊って語る作品随一のロマンティックなナンバーだ。

1953年というレビュー型ミュージカルの円熟期に、それこそ黎明期から活躍してきたアステアが存在しているなんてこれを奇跡と言わず何と呼ぶか。

「That’s entertainment」こそ本作のスピリットであり、エンターテイメントを作り出す人々の熱意に打たれる渾身の名作。
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