YuikiKoiwaさんの映画レビュー・感想・評価

YuikiKoiwa

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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.8

知識欲は哀れであり、支配欲もまた哀れである。

世間体は哀れであり、嫉妬もまた哀れである。

哲学は哀れであり、貧しさもまた哀れである。

労働は哀れであり、老いもまた哀れである。

暴力は哀れであり
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マイ・エレメント(2023年製作の映画)

4.5

期待のピクサー最新作。監督は「アーロと少年」のピーターソーン。

まず目を見張るのは、燃える、溶ける、光る、透けるといった四元素の特性を活かした演出だ。

苛立てば火が燃え上がるし、落ち込めば火はしぼ
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ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

4.2

昨年のトップガンマーヴェリックに続いて、トムクルーズによるスタントと色気で押し通すタイプの痛快アクションムービー。

物語はAIの反乱というありきたりなもので特別なものではないが、ここにトムクルーズの
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

ラストシーン、過去に民族音楽を研究した人物がキャンセルされた逃亡先で"モンハン"のシネマオーケストラを指揮するというこの皮肉。

依頼していた日本人指揮者さえ公演に来ないようなおこぼれの仕事にしかあり
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

5.0

純粋無垢な少年にとって映画とは夢だった。

芸術家の母親にとって映画とは理想だった。

技術家の父親にとって映画とは絵空事だった。

そして少年はやがて青年となり、彼にとっての映画は目の前の世界を書き
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アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

3.5

"物語る"という行為は、いわば魔法のようなものだ。

語り部の思うがままに理を定め、世界を形作り、登場人物の運命を操る。

誰が願わずとも世界は廻るが、語り部無しに物語は産まれない。

アリシアは物語
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キャバレー(1972年製作の映画)

4.8

最近は、歌唱が主役に据えられているミュージカル映画を久しく見ていない。

この映画におけるライザミネリの歌唱、振付、演技はあまりにも瑞々しく、実の母親であるジュディガーランドの生き写しと言っても差し支
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The Hand of God(2021年製作の映画)

4.2

悲しいのに泣けない。

悲劇が受け入れられないのではない。

今まで何を支えに暮らしていたのか、その根本となるものを見失っていたことに気付いたのだ。

周りの人間は立派に自分の人生を見出している(よう
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ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート(2022年製作の映画)

4.5

最高の演奏は言わずもがな、巧みな編集で現場のボルテージや警察官が入ってくる緊張感までを見事に捉えている。

あのlet it beに収録されているテイクがこんな屋外での演奏だったとは思いもしなかった。
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ザ・ビートルズ:Get Back(2021年製作の映画)

4.2

私がビートルズというグループを初めて認識したのは中学校の英語の授業で「hello goodbye」を歌った時だ。

「とても簡単な歌詞だけど疑問詞の文法やアクセントに気をつけながら歌いましょう」だとか
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

未確認飛行物体の存在からSF色が強いのかと思っていたが、それよりも人物描写に力の入った作品だった。

"見る"そして"撮る"という行為が鍵となる本作では映像制作の現場が重要な意味を持つ。

ここで引き
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カモン カモン(2021年製作の映画)

5.0

ジェシーが覚えたてのマイクセットを持ってビーチを散歩するシーンが私のお気に入りだ。

その録音には何の意図もないし、目的もない。

でも何故だろう。その音はどこまでも澄んでいて美しいのだ。

まるで綺
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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.2

舞台は70年代のLA。

リビングにはコカコーラとダイヤル式の固定電話。車で街に繰り出せば眩いばかりのネオンライトが視界を埋め尽くす。

この楽天的な時代に生きる2人の恋人に必要なものは互いの存在だけ
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ガタカ(1997年製作の映画)

4.3

人は己の過去を悲観せずにはいられない。

生まれた時代、出生、愛着、体力、知能、容姿、学歴、収入、これらの歴然とした格差。

その呪いを解くものは何か。

財産か、名誉か、優越感か、美酒か、それとも愛
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機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(2022年製作の映画)

4.0

機動戦士ガンダム15話のエピソードをリメイクした作品。

無人島に戦争孤児を匿いながらひっそりと暮らすククルスドアンと、未だニュータイプとしての才能を開花させる以前のアムロとの交流を描く。

原作アニ
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トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.2

ジェットの轟音、大画面を音速で流れゆく景色、操縦桿を握るコックピットの緊張感。

全てが映画的。全てがIMAX仕様。

前作未見ながら十分に楽しめた。

物語は超々々王道展開でガッチリ固められ、これ以
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バブル(2022年製作の映画)

2.0

このレビューはネタバレを含みます

キャラクターの生い立ち、パルクールのアクション性、バブルのSF設定の噛み合わせがイマイチで、ただ廃墟を跳ね回る若者を見ていたという感じ。

パルクール集団は孤児というにはいい生活ぶりで皆好青年ばかり。
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TITANE/チタン(2021年製作の映画)

4.2

"自分を愛して近づく者を殺してしまう狂気"

この良心をもってしては一切理解できない感情。

幼い頃の手術によって埋め込まれた矛盾を抱えながらも、アレクシアは幾度も人を愛そうと努めた。

しかし、こん
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アネット(2021年製作の映画)

4.5

スタンダップコメディアンのヘンリーとオペラ大女優のアン、"美女と野人"の電撃結婚は大いに世間を騒がせた。

熱愛の末生まれた子供"アネット"は摩訶不思議な人形の体を持ち、見せ物として身を売る両親の生き
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ハルク(2003年製作の映画)

3.0

戦車をべこべこにへし折るアクションシーンは範馬勇次郎ばりの奇天烈さで愉快爽快まっしぐら。

重力感も方向感覚もあべこべな撮影と編集で、終始振り回されっぱなし。

それにしたって、このブルースバナーは不
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(1954年製作の映画)

4.8

フェデリコフェリーニ作品初鑑賞。

海沿いに暮らす貧しい家庭の娘ジェルソミーナは、ある日突然旅芸人のザンパノに1万リラで売り渡されてしまう。

自分で選択する余地もなく厳しい環境に放り込まれた彼女だが
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ウルフウォーカー(2020年製作の映画)

4.5

狩人の娘ロビンとウルフウォーカーの娘メーヴ。

決して相容れない生まれの2人が出会い、そこで育まれる友情はこの冷たい世界を救うことはできるのか。。。



幾何学的で色味の薄い街と、生命が漲り木々や崖
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ソング・オブ・ザ・シー 海のうた(2014年製作の映画)

4.2

海も、雨も、シャワーも、涙も、言ってしまえば同じ水だが、その形状と持つ意味合いはまるで異なる。

ある時は青く、ある時は白い。ある時は点で、ある時は波。またある時は冷たく、ある時は暖かい。

この本作
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ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ(2021年製作の映画)

4.0

前作は単なる自己紹介でしかない。

全く無駄のないストーリーで、ヴェノムとエディの不和と再会、キャサディの過去、そしてヴェノムとカーネイジとの決着を97分でコンパクトに語り終える。

何より教会でのラ
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tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

5.0

『RENT』の産みの親、ジョナサンラーソンの自伝的作品の映画化。

過去には舞台版でジョナサン役を務めた経験もあり、今ミュージカル最前線をゆくリン=マニュエル・ミランダが監督に初挑戦している。

「ジ
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ヴェノム(2018年製作の映画)

3.0

ヴェノム2作目の予習のため鑑賞。

いやそりゃバレるわと誰でも分かる潜入捜査や最悪自己中上司のヴィランなどツッコミ所は満載であるものの、ある種のしょうもなさがこの映画のカラーでもある。

見どころはや
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ディア・エヴァン・ハンセン(2021年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

曲よし、歌よし、展開よし。

心の脆さのゆえに突き出た嘘は時間と共に膨れ上がるも、それが愛する人を傷つけるのならばもう嘘に価値はない。

人は自分を犠牲にしてでも守りたいものを見つけた時に、やっと大人
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

3.7

エドガーライトが撮ると聞いて、怖い・痛いが苦手で避けていたホラージャンルに初挑戦。

音楽のチョイスと鳴らし方はやはり絶品で、キャラの心情を語りながらノスタルジーを掻き立てる。

そして最高にハイにな
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ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)

4.2

待ってました。ディズニーミュージカル最新作。

マジックリアリズムに彩られた魅惑の世界への扉が今開かれる。

皆が個性的な魔法のギフトを持つマドリガル家の中で、一人だけギフトをもらえなかったミラベル。
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エターナルズ(2021年製作の映画)

4.0

あまりに規模感が大きいが故に、ありがちな力比べの物語から選択の物語へと新しい切り口を見出した一作。

クロエジャオが描く「葛藤」は、今までのマーベルにはなかった極上のサスペンスを提供してくれた。

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サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)(2021年製作の映画)

4.2

自らの受けた傷を数えその悲しみを歌うブルース

国と国、民族と民族、人と人の架け橋となるポップ

神へと救いを求め自らの信仰を表すゴスペル

揺らぎに自由を、即興性に感情の発露を見いだしたジャズ

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アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン(2018年製作の映画)

4.8

ゴスペルの神髄を見事にフィルムに焼き付けた作品。

女王アレサ・フランクリンを取り巻くのはコーネルデュプリー、チャックレイニー、バーナードパーディというグルーヴそのものを定義してきた張本人達とサザン・
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竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

1.0

このレビューはネタバレを含みます

細田監督が美女と野獣をオマージュしたかったのは分かるが、原作の立場と彼の問題提起とではあまりに距離があるだろう。

そもそもディズニー版の美女と野獣では、村から抜け出したいベル、呪いでもはや村には行け
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ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

4.4

社会の除け者にされた人々の生き様を鮮烈に、残酷に、そして最高に愛らしく描いた作品。

開幕、展開、結末まで名シーンに次ぐ名シーンの連続で、誰一人無駄キャラなしの群像劇が繰り広げられる。

本作最大のヴ
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しあわせの隠れ場所(2009年製作の映画)

4.0

黒人のストリートチルドレンがとある白人の家族に保護され自立するまでを描く、実話を元にしたお話。

彼は学歴も住居も家族も持ち合わせていなかったが、それらを必要ともしていなかった。

だから見ず知らずの
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