捥がれた翼のような真っ白なショールが空を舞う、終わりにむかうはじまりが美しすぎたから、わたしはあんしんした。
絶望にきちんと絶望できなかった彼女の苦しみとこれから訪れるあらゆる憂いとをだきしめて。
深海を湛えた彼女の瞳。鎧のように纏う灰緑のコート。暗闇で光る涙と汗。流れに抗えばどこへいったってきっと溺れてしまう。ここから飛びたつよりほかは。
ドストエフスキー×ブレッソン がすきすぎるので棺がとじられるまで、わたしは幸せでした。
「すべてが無理」であやうく爆笑しそうになったし、この どうしようのなさに毎度救われる。
「苦しんで、生きるほかない」という諦念に抗う希望のひかりが、ものがたりを紡ぐから。