Tラモーン

3時10分、決断のときのTラモーンのレビュー・感想・評価

3時10分、決断のとき(2007年製作の映画)
4.0
カッコイイ〜〜‼︎
ラッセル・クロウもクリスチャン・ベイルもこんなにカッコイイと思ったのは初めてかもしれない…。

南北戦争で片足を失った牧場主のダンが、極悪非道な強盗犯ベンを囚人輸送のため「3時10分ユマ行き」の汽車に乗せるまでの護送を描いた西部劇。

20件以上の強盗を働き、味方ですら殺すことを厭わない"神の手"と言われるほどの早撃ちにして、良心すら持ち合わせないと豪語する強盗団の首領ベン。

南北戦争で狙撃手として従軍しつつも戦争で片足を失い、今や領主から立退を求められ、借金を背負わされ、嫌がらせを受ける日々を過ごす生真面目な牧場主ダン。

偶然に出会い、護送する側とされる側だった2人の関係性の変化と、徐々に炙り出されるそれぞれの人間性の描き方が素晴らしい作品だった。
必要以上に語られるわけではないのに、とても濃密に描写されていて、これは完全に名優2人の演技力の賜物だなと…。

元々は借金を返すための金目的だったダンが、次第に自らの人生と誇りをかけた戦いに身を投じていく様を演じ切ったクリスチャン・ベイル。切なさと必死さが滲むギラついた目が印象的だ。
家族から尊敬されていないことに悩み苦しみながら精一杯もがく姿と、クライマックスでの感情の吐露は胸を鷲掴まれる。

冒頭では残虐な強盗団のボスとして描かれるも、物語が進むにつれて信念と確固たる己の正義感に従って生きるアウトローな男へと印象が変わっていくベン・ウェイドを演じたラッセル・クロウ。カッコイイ悪役ってのはこれなんだよ…と唸ってしまうほどカッコイイ。
ただただ粗暴な人殺しの印象だった前半から徐々に彼なりの正義感に気がつくような展開がとても面白い。正義感と倫理観を揺さぶるという意味ではホアキンの「ジョーカー」にも通ずる部分も感じられた。
クライマックスでダンの吐露を受け止めた彼の行動は男気以外の何物でもなかった。

そういう意味で脇を固める俳優たちも無駄のないキャラクターだったんだなと気がつく。
ダンが加わる護送団は彼に嫌がらせを働く鉄道会社の人間だし、心境の変化には間違いなく息子ウィリアムの同行は影響している。
ベンを追う強盗団の二番頭のチャーリーの正義はベンの存在そのものだ。自身の確固たる倫理観ではなくベンを盲信するキャラクターとして描かれている。衝撃のラストシーンでは、そんなチャーリーとベンの決定的な違いが露わになる。

そんな最後の最後はラッセルの男気溢れる演技に痺れるばかり…。

いや〜、めちゃくちゃ男臭かった。
西部劇にありがちな勧善懲悪モノではなく、濃密な人間ドラマで生き様や誇りを描いた名作だった。

本当、アウトローはかくあるべきだよ。
Tラモーン

Tラモーン