尿道流れ者

時をかける少女の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

時をかける少女(1983年製作の映画)
4.6
アニメ版の時をかける少女しか観たことがなかったので、淡い青春時代を描いたジュブナイルファンタジーだと思っていたが、映画版は全く趣が違った。時空を超えた純愛なんて発想はなく、未来から来たストーカーが可憐な少女の記憶を改ざんして近づき、自分を愛するように仕向けるという限りなく恐ろしい話。

大林宣彦映画のチープな合成や演技・演出の作り物感がこの映画の怖さにとてもマッチしていて、映画に映る全てが実は未来から来た深町という男に作られたかのような錯覚をしてしまう。

原田知世の天真爛漫な可愛さや演技はアイドル映画らしくハキハキとしてとても魅力的。しかし、その魅力がこの映画の怖さや悲劇性を際立たせている。解決したと思いきやラストシーンで再び芽を出す恐怖はサスペンスのそれで、スタッフロールの後ろに流れる幸せで平穏な日常もチグハグなものでどこか不穏な空気があり、余韻を最後の最後まで残している。

怖ろしいが面白い。懐かしさを取り払うかのように作られたノスタルジックな情景の中で徐々に少女が侵食されていくダークファンタジー。暑い日にぜひ。