そらち

モスラ対ゴジラのそらちのレビュー・感想・評価

モスラ対ゴジラ(1964年製作の映画)
3.0
おもしろいやん!
前作のキングコングが超つまんなかったし、また同じ本多猪四郎だからダメだろうなと思ってたけど、本作は良かった。
特撮の撮影技術が本作から向上していて、前作までは「こうやって撮影してたんだ〜」という学び映画だったのに対し、本作は今の感性で見ても「これを現実とほんのちょっと錯覚するときが何回かある」ぐらいには向上している。
モスラはいいやつ。
「祈り」がモスラ(いうたら島の神)を動かすという構図は、とても日本的でよい。(とはいえ南の島だが)
ザ・ピーナッツの歌が素晴らしくて、作品に神秘性を与えている。
小人の映像的表現も実に自然で、本当に小人がいるように錯覚できるレベルにはうまく合成されている。
本作のゴジラは、足を滑らせて名古屋城にぶつかる「おっちょこちょいゴジラ」だけど、wikiによるとこれはアクシデントで足を滑らせたんだけど、再撮影期間がなかったのでそのまま使ったんだとか。
人間側はモスラに頼りっぱなしではなく、自衛隊側のわりと効果的な攻撃(電撃)も描かれててなかなかいい。
航空機から網を落とすシーンは非常にリアル(実写?)
人間ドラマも緊迫感がちゃんとあって、前作の「スッカスカおちゃらけストーリー」ではなくなってるのがよき。
水爆による他国民の不信感、新聞記者としての責任、大規模リゾート開発の闇など、社会的な部分も描いていて深みが出る。
「新聞は政府のためじゃない、国民のためのもの」的な新聞記者の発言は素晴らしいね。今の新聞テレビの「政府広報のいいなりのまま垂れ流すだけ」とは違う。今のマスコミはモスラ対ゴジラを見て学べ笑。
第1作目の宝田明がまた主演だけど、この人がとてもいい。
この人の真面目な感じが、娯楽だけになってしまいがちな「怪獣映画」に、緊迫感を与えて映画を引き締めている。
「ハンサム」という言葉はこういう人のことを指していたんだなと。
モスラの卵が実物大で製作されていてすごい。
モスラが代替わりして幼虫が戦うというアイデアも、展開があって飽きなくていい。
幼虫を見たときの、「ああ、こんな幼虫でゴジラを倒せるわけがない」と思わせといて、糸のアイデアで勝つ感じ、映画のセオリーがしっかりしてて見応えがある。
幼虫が海を泳ぐシーンがめちゃリアル。
人がたくさん逃げ回るシーンも、今見ても耐えられるぐらいクオリティが高い。
子供を助けようとする先生の迫真の演技も素晴らしく、心を打つ。
本多猪四郎は、前作みたいなおちゃけを作ったり、本作みたいな社会派を作ったり、よく分からん監督だなあ。
でも、ひとまず面白い感じに復帰したので、次作も楽しみになった。
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