Jeffrey

オテサーネク 妄想の子供のJeffreyのレビュー・感想・評価

オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)
3.5
「オテサーネク 妄想の子供」

冒頭、赤ちゃんの鳴き声と笑い声が交じる中、スチル写真が複数カット割りされる。不妊に悩むとある夫婦、向かいに住む家族、底無しの食欲、苦悩、切り株の木、自走、誕生、オチーク、父と母、暴徒、少女の母性、生贄、親の決断、管理人。今、奇想天外な物語が始まる…本作はヤン・シュヴァンクマイエルの原作を自ら監督、脚本、制作した2000年の映画で、この度BDがようやく発売され数十年ぶりに鑑賞したが傑作。本作はチェコとイギリスの合作ホラーファンタジー映画で、チェコの民話「オテサーネク(食人木)」を下敷きにした作品を監督が4作目に選んだ題材である。確か日本公開された際に唯一PG-12指定を受けた監督の作品である。チェコのグリムと評されるカレル・ヤロミール・エルベンが書いたお話の中で、特に慣れ親しまれた作品の1つであり、この話を現代に置き換え、実写にアニメーションを加えながら、シュヴァンクマイエル風味を存分に効かせ、異色ダークファンタジーに仕上げたものになる。


本作は冒頭に、赤ちゃんの鳴き声と笑い声を交えながらスチール写真が複数枚カット割りされる。やがて真っ赤な服を着た女性の等身大看板が映し出され、カメラはなめらかに妊婦のお腹をクローズアップしていく。そこに真っ赤な帽子と衣装を着たとある女性がカメラに向かい微笑む。メガネをかけた男の姿が何度かカット割りされる。次に、その男が窓の外を眺めると、赤ん坊が桶から掬い上げられ、体重計に乗せられ、新聞紙に包まれる。さて、物語は不妊に悩む夫婦がいた。ある日、偶然見つけた切り株が子供の形に見えたことから、妻はそれを我が子と信じて人間の子のように世話をし始める。だが切り株の子オチークは、底なしの食欲でどんどん暴走し始め…と簡単に説明するとこんな感じで、監督自身が小さい頃に、食事をあまりしたくなかったにもかかわらず、両親に食べさせようとする圧力がすごくて、本当に辛い思い出だったと言っているのを聞くと、無理矢理食べさせられた恨みが映画に投影させているなと思える1本である。だから劇中の食事のシーンはどれもまずそうに見えるのだ。自身の拒食体験が食べ過ぎる過食の行動によって悲惨な目にあう人々が写し出される。

いゃ〜、めちゃくちゃ高画質でびっくりする。この作品シュヴァンクマイエル作品の中でも結構好きで、やはり久々に見たけど独特で気狂いぶりが堪らない映画。というかチェコ映画はこんな感じの作品が多くて非常に好きだ。食事をするシーンのあのどう見ても美味しそうに見えないスープのクローズアップから父親が思いっきり娘を叩いて顔面がスープの中に突っ込みスープまみれにする強烈なシーンから、男のズボンの陰部部分のボタンが外される場面、切り株を赤ん坊と思い込んだ奥さんが洋服を着させたり、それを困惑した表情で見つめる旦那の姿の滑稽さ、スイカを切った中から生まれたての赤ん坊が現れたり、奇想天外なシーンのオンパレードだ。そもそも21世紀に入ってスタンダードサイズで撮るところがまた良い。最近ではドランの「マミー」や「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」などもあるが、それぞれにシネマスコープじゃない良さがある。

そんでその切り株の赤ちゃんに命が宿って、ますます物語が摩訶不思議な世界へと入り込む。底なしの胃袋で何でもかんでも食べてしまい、自分の母親のブロンドの髪の毛まで食ってしまう始末である。そしていよいよ人間まで食い始める。そこから事件性に発展していきサスペンスになっていく。この作品のブルーレイに収録されている子役オーディションを見たんだけど、主人公の女の子も可愛らしいが、次にオーディション受ける女の子も可愛かった。このブルーレイは本家本元以上に音質も最高で映像も美しくて、チェコ版は一層ディスク= 25 GBの容量だったが、音声もDVD等でよく使われている情報量の小さいドルビーデジタル・フォーマットでの収録だが、このブルーレイは二層ディスク= 50 GBの大容量をフルに使い、元の35mmフィルムの持っていた質感や色味をしっかりと捉えていて、音質も2 CHステレオはリニアPCMで、5.1chはDTS-HDマスターオーディオと言う、大元のマスターから損失の生じない高音質で収録されている。
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