ともぞう

彼岸花のともぞうのレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
3.2
小津監督、初めてのカラー作品。赤の発色が良いとのことでドイツのフィルムを採用したので、赤色の小物を多々使用している。今作では主役は笠智衆ではなく佐分利信。他人の娘には幸せが一番と言いながら、自分の娘の結婚は許さない頑固親父を田中絹代との掛け合いで魅せる。でも、広島転勤が決まって時間がなかったとは言え、彼女にも話さず、いきなり彼女の父親の会社に飛び込んで結婚の話を切り出した所でドン引き。いきなりあんな事をされたら、普通は反対するだろう。脚本に引っかかってしまった。

〈あらすじ〉
大和商事会社の取締役の平山渉(佐分利信)と元海軍士官の三上周吉(笠智衆)、それに同じ中学からの親友の河合利彦(中村伸郎)や堀江平之助(北竜二)、菅井(菅原通済)達は会えば懐旧の情を温めあう仲。それぞれ成人してゆく子供達の噂話に花を咲かせる間柄でもある。平山と三上には婚期の娘がいた。平山の家族は妻の清子(田中絹代)と長女節子(有馬稲子)、高校生の久子(桑野みゆき)の四人。三上のところは一人娘の文子(久我美子)だけである。その三上が河合の娘の結婚式や、馴染みの女将(高橋とよ)のいる料亭「若松」に姿を見せなかったのは文子が彼の意志に叛いて愛人の長沼一郎(渡辺文雄)と同棲していることが彼を暗い気持にしていたからだった。その事情がわかると平山は三上のために部下の近藤庄太郎(高橋貞二)と文子のいるバーを訪れた。その結果、文子が真剣に結婚生活を考えていることに安堵を感じた。友人の娘になら理解を持つ平山も、自分の娘となると節子に突然結婚を申し出た青年の谷口正彦(佐田啓二)に対しては別人のようだった。彼は彼なりに娘の将来を考えていた。その頃、平山が行きつけの京都の旅館の女将の佐々木初(浪花千栄子)が年頃の娘の幸子(山本富士子)を医師に嫁がせようと、上京して来た。幸子も度々上京していた。幸子は節子と同じ立場上ウマが合い彼女の為にひと肌ぬごうと心に決めた。谷口の広島転勤で節子との結婚話が本格的に進められた。平山にして見れば心の奥に矛盾を感じながら式にも披露にも出ないと頑張り続けが、最後は折れて渋々ながらも出席した。結婚式の数日後の平山はクラス会に出席したが、親は子供の後から幸福を祈りながら静かに歩いて行くべきだという話に深く心をうたれた。その帰り京都に立寄った平山は節子が谷口の新任地の広島へ向う途中、一夜をこの宿に過して、父が最後まで一度も笑顔を見せてくれなかったことを唯一の心残りにしていたと、幸子の口から聞かされて、さすがに節子の心情が哀れになった。幸子母娘にせきたてられて平山はくすぐったい顔のまま急行「かもめ」で広島に向った。
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