中村登監督作品でいえば『暖春』『河口』『惜春』は個人的ベストであるが、本作は総括して好まなかった。
演技、撮影の面で大袈裟すぎる素振りがあり、冗長に感じてしまった。
変なスローモーションが使われてるのも違和感だった。
ナレーションで補う手法は率直に嫌だった。
ロケーションの問題から、忠実に原作に倣うことはできなかったものと推測されるが、しかしそれでも、職業などの設定から無理矢理感は否めない。
主役も、変に真面目すぎるというか、色気がなさすぎるというか、本編を通して性欲が感じられず、生きている映画という感じではなく、昔の文学を今風にアレンジしただけという感じで、血が通っていないように感じた。
とはいえ、70年代の六本木2丁目の景色が見られたことはよかった。