2021年5月現在もご存命で昨年はコロナ禍で「コーマン検疫映画祭」を開催する等未だ精力的に活動する先日95歳になったB級映画の帝王、ロジャー・コーマン爺のドキュメンタリー。出演する監督はマーティン・スコセッシ、ロン・ハワード、ジョナサン・デミ、タランティーノ、ポール・W・S・アンダーソン、イーライ・ロス等で、俳優はデニーロ、ニコルソン等と彼の影響力の高さが伺えます。
時に粗製濫造とも批判されそうなB級映画を短時間・低予算で作り上げるイメージが強く、実際同じセットで複数の映画を作ったりするわけですが時代に合わせた作品作り、人種差別が激しい時代に南部で撮影した「侵入者」では人種差別反対のメッセージを込めたり、今作では取り上げてませんが村上龍監督「KYOKO」では製作総合指揮を務めたり、今敏監督のアニメ「パーフェクト・ブルー」や黒澤映画含む良質な海外映画を買い付けたり(ジブリの「ナウシカ」は大幅カットしてますが 笑)とその能力や嗅覚は確かなもの。そして未だに映画への情熱が衰えないロジャー・コーマン氏にただ感動するのみです。
作品のイメージからすれば無精ヒゲ+黒縁メガネで大柄で不遜な人物が出てきそうですが本人は外見も中身も紳士的とビジュアルにギャップが有るのも印象的で、「世界に与える外見の印象と、無意識に思い描いていることの違いが重要なんだ。私の外見は平凡と言われてきたが、心の中は煮えたぎる地獄のようなものさ」という言葉は平凡な外見で(時に中身が濃いと言われる)少し悩む自分には励みとなる言葉でした。
個人的には70年代の傑作カーアクションでロン・ハワード監督「バニシングinターボ」を割と取り上げてくれたのが嬉しかったです。そしてコーマン監督を目の前にして映画好きの子供に戻ったようなタラちゃん(タランティーノ)やドキュメンタリー制作当時はまだご存命だったピーター・フォンダ、デヴィッド・キャラダイン、そしてコーマン監督の弟のジーン・コーマン等のインタビューにも注目したい所。また、初期に手掛けたカーアクションが「ワイルドスピード」シリーズの原題「Fast And Furious」だったり、前述の「バニシングinターボ」のそれも人気ゲーム「Grand Theft Auto」という点には運命的な影響力さえ感じます。
ちなみに2000年代に「世界仰天ニュース」辺りの番組でロジャー・コーマン特集をしていたのですが、覚えている方居るでしょうか。当時最新作として「死者の日」なる映画を手掛けていると観た記憶が有りますが、検索しても出てこないので日本では未公開or違う邦題で発売されたのか気になっています。