私たちの心に切なさが残るなか、彼らが流す涙が美しく光を含みながら手の甲に零れる。
ジャン=ルイ・バローが主演する1942年のフランス映画。監督はアンドレ・ベルトミュー。
芸術の都、学問の都パリを舞台に、1939年4月15に1周年を迎えた青年生徒グループ“狂った雌牛”のメンバーである彫刻家のジャックと身寄りのないジュヌヴィエーヴの恋模様を心情深く描いた作品。
戦争が大きく絡んでいる物語で、この自分たちではどうしようもできない事柄が行き場のない悲しみを生み出している。総動員令が出されたフランスで、戦線に向かうことを余儀なくされた男性たちと彼らが無事に帰ってくることを待つことしかできない女性たち。恋人に無事に帰ってくることを簡単に誓えない彼と約束できない言葉だと分かっていながらそう訊ねる彼女。恋人、仲間たちとの日常に別れを告げるその様子がどうしようもなく甚い。
便りもなく、生きているかさえも分からない。生きていても酷い怪我を負っているかもしれない。そんな不安と心配だけが募るなか、ただただ愛する人の帰りを待つ。こんなこと、あってはいけない。
「かわいそうな人に施しをしただけ」
ラストがとても印象的でした。
題名に惹かれてレンタルした作品。原題は『L'ange de la nuit(夜の天使)』なのですが、個人的には邦題の『泣きぬれた天使』のほうが好きです。
フランス映画久しぶりに観たけど、やっぱりフランス語の響きは心地良い。