シゲーニョ

ハート・ロッカーのシゲーニョのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
3.0
以下、10数年前、劇場での初見時の感想です。

「やおい臭」プンプンの作品!!

ある任務が成功して、その晩は酒飲みドンちゃん大会。
それが、いつしかヤロー同士1対1の殴り合いにチェンジ!
殴り殴られながら、男の友情が芽生えていく展開は「ハートブルー(91年)」ぽいが、 それがエスカレートして、多分メジャー映画初となるヤロー同士の騎乗位シーンに・・・。

こんな風に書くと、新宿か上野のハッテンバと化しているような映画館で 観ればいい作品と思えるかもしれないが、実は意外と深い。
一方の男は泥酔してバカやってるが、もう一方は酔っぱらったフリして 実はマトモ。こいつが本作の主人公でスリルジャンキーなわけである・・・。

某雑誌で青井邦夫氏も書いていたが、 ビグロー姉貴が「ブルースチール(90年)」あたりから一貫している 「何かに取り憑かれた男の生態を冷静に観察する描写」が、 本作でさらにネチっこくなった印象。
これじゃ、「アカデミー賞獲ったんだから感動する映画でしょ」って気分で 観にきたカップルなんかが萎えて帰るのも当然だと思う。

所帯持ち or 結婚間近の漢(オトコ)の方々にはオススメで、ネタばれになるので詳しくは書けないが、スゴく考えさせられるのでは・・。

自分的にグッときたのは、主人公の台詞。
「子どもの頃、スゲー好きだった物は、 大人になってくると実はそうでもなかったって思うようになる。 オッサンになった俺は、そのうちの1つしか、もう好きじゃない」

最後にちょっと残念だったところを・・・。

スーパー16を35ミリにブローアップしているので、 画のザラつき具合が、中東の砂塵・戦場の荒廃感をうまく醸し出している。 しかし撮影監督のB・アクロイドのカメラワークがいただけない。

P・グリーングラス監督の「ユナイテッド93(06年)」で絶賛された 手持ちカメラのブレブレ&ガッチョ~ン的なズームは今回も健在で、 中盤の近接戦闘シーンでは上手く緊張感を画に漲らせているが、 主人公がたった独りで、仕掛け爆弾を処理する場面(=近くには誰もいない)で 主人公を後ろから回り込むドリーショットをやってしまっている。

オイ!それは、誰の目線ですか!?
アナタの撮影方法って、 観客にさも実際にそこにいるように思わせることを狙いとした、劇中内で実際にいる 他者の目線だったんじゃないのかい。