上空連打谷口

遥かなる山の呼び声の上空連打谷口のレビュー・感想・評価

遥かなる山の呼び声(1980年製作の映画)
4.4
干し草の上で少年誌読みたくなる映画ランキング第1位

北海道の牧場を切り盛りする母子のもとに、ある冬の嵐の夜、男が訪ねてくる。牛のお産を手伝い一晩泊まったその男は翌朝になり出て行く。そして辛い冬の時期過ぎ、夏がくるとまたその男が現れ、今度は働かせてほしいと頼むのだった。

北海道の厳しい寒さを、まじまじと見せつけられているのにも関わらず胸が熱くなる。
倍賞千恵子さん吉岡秀隆さんの親子と、高倉健さん演じる男の、徐々に心が通じ合っていく様を、雪解けのようにじっくりと丁寧に描く。冬から夏、そしてまた冬…と長い月日をかけて、北海道の壮大な大自然を見事に映し出す山田組の熱がこちらにも伝わってきた。

〜ネタバレ含む感想〜
高倉健さんの愚直で不器用だけど人情がある男には、いつも憧れる。決して奥さんには手を出さず黙々と働く姿勢に、息子も懐き、自分に付き纏う男を追っ払ってくれもして、その上乗馬をした勇ましい姿を見たら、誰だって惚れてしまうものだ。

ラストシーン、電車で護送される男の向かいの席に座り、「待っているからね」と自分の気持ちを伝える小芝居をする倍賞千恵子さんとハナ肇さん。それに涙と眼差しで答える高倉健さんの、込み上げてくる想いまで見えてきそうな演技力に目頭が熱くなった。