凛葉楓流

ラスト・タイクーンの凛葉楓流のレビュー・感想・評価

ラスト・タイクーン(1976年製作の映画)
3.4
エリア・カザンの遺作は映画についての映画。しかもロバート・デニーロ。期待しないはずがない。なのに……

個々のエピソードが雑すぎやしませんか?試写中に死んだおじさんとか、最後の方にいきなりジャック・ニコルソン出てきてピンポン対決とか。
カットの繋ぎも雑。特にヒロインと海辺の家に行くくだり。車に乗ってドアを閉めた次のカットで車のドアを開けた(到着した)とき、完全に萎えた。
けれど、ラストでデニーロが撮影所の闇の中に消えていくところ、誰もいない部屋でカメラに向かって一人芝居をするところ、ピンポンで真正面から暗闇に浮き上がる二人を撮ってるところ。理屈抜きにドキッとした。

劇中劇が完全にカサブランカだったのにはツッコまずにはいられない。まあハリウッドの全盛期の空気感を体現してる映画ではありますが。
あと繰り返し"共産主義者"というワードとホモフォビアが出てくるが、これは赤狩り期を生き延びたエリア・カザンの遺作として象徴的。

(追記)まさかフィッツジェラルドの未完小説が原作とは……だからこんなに判然としないんですね。
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