鳥羽

罠の鳥羽のレビュー・感想・評価

(1949年製作の映画)
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これは素晴らしい。リアルタイム劇ながら良い意味で忙しない感じがなく、ひたすら濃厚なショットと名演に溢れている。
試合前の、不安を抱えつつも情熱を持ちリングへ向かう主人公と彼の身の危険を心配するあまり直視出来ずに夜の街を彷徨う妻の(それぞれの表情を含めた)対比からして最高。強烈な殴り合いに小道具を用いつつ観衆が一喜一憂する試合の場面もエネルギッシュだし、そこから大きなうねりを伴って歓声が主人公の応援に変わっていく様は短い時間の中でスリル/興奮を醸しだす。
試合後に主人公が襲われる場面はセットや照明を存分に活かしまた違ったスリルを生み出しており、儚さの中に安堵を抱えたラストまで片時も目を離させない。
『レイジング・ブル』はじめ後のボクシング映画に与えた影響も大いに窺えるし、映画がいかにボクシングと相性が良いかも再確認。傑作。
鳥羽

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