金宮さん

髪結いの亭主の金宮さんのレビュー・感想・評価

髪結いの亭主(1990年製作の映画)
3.5
幼少期に床屋さんの女性で性に目覚めてしまった主人公アントワーヌは床屋との結婚を夢見て成長。理想的な理容師のマチルドと出会い、求婚したところ無事成就。夢のような生活を繰り広げる。

あらすじだけではわからない部分が「アントワーヌは結構キモい寄りのおっさん」「"夢のような生活"は単なる変態プレイ」であること。つまり写実的に描くときっと観てらんないものになるのだが、何故か綺麗な画として奇跡的なバランスを保っているのが凄い。

ひとえにマチルドを演じたアンナ・ガリエナに寄るところが大きい。そのぐらい官能的で美しい。

ただ今作にはそのバランスが崩れてしまう愛嬌もあったりする。例えば、散髪がとても嫌でぐずり続ける少年を母親が理髪店に連れてくるシーン。「任せなさいっ!」的な感じでアントワーヌが趣味のインドっぽいダンスを見せつける。少年は奇怪なものを見るような目つきで泣き止み、母親は大丈夫かこいつ?的な目で睨んでいる。そんな中、淡々とマチルドは散髪をする。4名全員のアップショットを映したあとに、空中から引きの画角で全員を俯瞰する。こんなの笑っちゃうって。

見かたとして間違ってるかもしれないけど「絶対に笑ってはいけないフランス映画」的な趣きもあり、そんな感じでも楽しめたりもした。

ただなあ、やっぱりラストはいただけない。
ちょっと不条理が乱暴すぎるかな。
金宮さん

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