小刻みなものから長回しまで、すべてのショットに意味がある。とくに、ジョン・ヴァーノンとデルフィーヌ・セイリグがマイケル・ケインの部屋に仕掛けを施す場面の長回しは、セイリグがコートを脱ぐだけで全裸になったり、ヴァーノンがポラロイドで撮影したりといった作業プロセスが手際よく進んで目が釘付けになる。このセイリグが中盤であっけなく消えたのには驚いた。マイケル・ケインが諜報員になってから妻ジャネット・サズマンの気持ちが離れていたところ、逃亡中のケインが警察の盗聴をかいくぐるように粋な方法で暗号を伝えて、夫婦のヨリが戻る展開も素晴らしい。夫への信頼を取り戻したサズマンは目が痛いくらいの赤い衣装で外出し、子供が幽閉された建物を調べてケインに伝える。