百合野

瞳は静かにの百合野のレビュー・感想・評価

瞳は静かに(2009年製作の映画)
3.7
主人公の男の子を取り巻く世界で起こることが、シンプルに映し出される。日常的なスピードで、話が進んでいき、説明的なセリフや、描写が少ない。だから、時々、「今のは、何を表現したかったんだろう」と思いながら見ていた。見終わった後、しばらく放心していた。映画を見ながら、消化をすることが出来ていなくて、モヤモヤしていたから。でも、あぁ、あの場面は、こういう意味だったんだろうなあと、いろんな情景が、だんだん、心のなかで意味を持ってくる。瞳は静かに、意外にしっかりと、感じ取っていたんだと気付かされる。たぶん、説明的な部分が、少ないから、注意深く映画を見ていたんだろうと思う。また、この映画には、秘密めいたものを感じた。私は、見終わった後、心のなかで、謎解きをした。映画の中に、謎解きを入れることができない理由があると思った。あんまり、おおっぴらに表現できないのかもしれない。戦後からだいぶ時間がたった、現代でも、表現しにくい内容を、なんとか、映画で、描ききったという感じで、見たあと、苦しくなった。心に、否応なしに、深く残った映画だ。
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