Takumu

アンダーグラウンドのTakumuのレビュー・感想・評価

アンダーグラウンド(1995年製作の映画)
4.8
圧倒的な傑作。

『昔、ある所に国があった』。名は、ユーゴスラビア。首都をベオグラードに置いた、複数の民族・言語・宗教が入り混じる多文化国家。時は第二次世界大戦真っ只中、ナチス侵攻下で、共産党員の親友マルコとクロはナチスやその支持者を襲っては、武器と金を奪っていた。革命家として地位を築いた2人だったが、ナチスの激しい攻撃によって環境が悪化していき、友人や家族は地下で暮らさざるを得なくなった…。

けたたましいブラスバンドを率いた逃走劇に始まり、破壊的でありながらコミカルな第一幕。父子の愛と恋情のもつれ、崩れ始める友情という人間性を戦争に絡めてに見せる第二幕。真の歴史をなぞって、戦争と国家の崩壊を描く第三幕。171分は長尺に思えて、この内容では短いくらい満足度が高く、物足りなさまである。完全版(テレビ放送版)をぜひ見てみたい。

2人の主人公を取り巻く人々の群像劇的な映画で、多くの魅力的なキャラクターに感情移入して見ることができる。鑑賞後真っ先に思ったのは、“時代が違えば、陽気で幸せな友・家族でいられたのに”ということ。ラストシーンの素晴らしさたるや。一生忘れられないと思います。

ユーゴスラビアの歴史は詳しくなく、映画に秘められたメッセージは読み取れませんでしたが、単純に戦争ドラマとして質が高く、万人ウケする脚本だったと思う。ジョニデの逆オファーを蹴って、ユーゴスラビア出身の俳優で固めたのも監督の本気度が伺える。

祖国とは魂の楽園。
Takumu

Takumu