Yuki2Invy

人情紙風船のYuki2Invyのレビュー・感想・評価

人情紙風船(1937年製作の映画)
3.8
元ネタは確かに歌舞伎の所謂『髪結新三』で、私歌舞伎にはトンと縁が無いケドも⇒コレは落語にも翻案されていてソッチは一回くらいは聴いた様な気もする(私落語は結構聴くので)。山中貞雄監督作で、現存する監督の他作品と同様(前述どおりに)原作付きの時代劇、でまた個々の描写の諸々ってのもかなり「時代的」とゆーか、私が落語で聴いた様な情景=落語を結構聴いてるから何なのか分かるってな情景、てのがごくふんだんだったかな~とも思ったりもするのですよね。長屋の通夜の宴会で酔っ払いが「なすかぼ」踊ってたり・振分の屋台の二八そば屋だの「羅宇屋」だの…なんて連中も、コレは今どきにいきなり観ても流石にモ~よく分かんないと思うのですね(率直に)。加えて、この映画化に関しては、そのテーマにあたる要素=勘所とゆーのも、ちょっと(現代的な視点からは特に)分り難い気もしますかね。歌舞伎や落語の方はとゆーと、タイトルがまんま『髪結新三』なんだからその新三の「悪の魅力」みたいなモノをメインディッシュに描けば好い…様な気もするのですが、今作はどーもそーいう単純な話でもなかった様にも私には思えていまして…とゆーか。

で、じゃあどーいう作品なのかってーと、コレもソコいら中で言われてる通りに、一見コテコテな時代劇に見えるんだケド⇒今作って実は全然違う「現代的な」虚無感・悲哀を描いてる作品なのだ…てコトですね。新三にしても・或いは又十郎にしても、破滅に向かう彼ら自身の動機(心情)とゆーのはまたごく時代的なソレだったとは思うのですが、結末(とその描き方)については実に珍しく無力感の漂う空しいモノだったな、と。コレは確かに、昔の人にとってはたぶん衝撃、で現代人に関してはむしろ引っ掛からずに飲み込める(⇒仁義だ忠義だって「時代的」なソレよりは引っ掛からず飲み込める)という感傷なのかもな…とも思うのですケド、あくまで私個人としては(ナンと)ソコがちょっと違和感にも為ってしまってた…という気がするのですよね⇒普段観てる「伝統芸能」系の諸々のお話と、如何にもそー見える今作に(前述どおりの)この「ギャップ」が在ったコト自体が、ワリと高度な違和感だった、と。

結論、コレまた、今なお全然フツーに面白く観れる優れた時代劇だとは思うのですが、重ねて個人的には、損した様な得した様な変な状況が発生してしまってて⇒結果としてちょっと歯切れの悪い様な有様になってしまいました、というコトですね。とりあえず、もし機会が在ったら歌舞伎版の方をちょっと観てみようかな~なんて……
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