囚人13号

スピオーネの囚人13号のレビュー・感想・評価

スピオーネ(1928年製作の映画)
4.9
『ドクトル・マブゼ』と混同してしまっていたので再見、やっぱ超面白い。

性格描写を掘り下げず、ラスボスはただ圧倒的存在感をもって画面を支配する点ではハーギ≒マブゼだが『M』における殺人鬼から人物の心情に対するラングの姿勢は徐々に繊細さが増していく。
大犯罪や変装といった要素はマブゼ/ファントマと似通っている(そもそもマブゼとファントマの間にはかなりの因果関係が認められる)が決定的なのは個人から明かされる組織の存在、またその内部で勃発する支配者(ハーギ)と手下(ソーニャ)との対立や日本人エピソードで、326号がそれを知らないという事実が観客へ優越を明け渡す。

数字で呼ばれる者同士、大組織の一人でしかない男と女が惹かれ合うメロドラマ要素を上手く取り入れつつも、結局のところ本作はモンタージュと画面設計が一番かっこいい。車輪に重なる数字と列車事故、大爆発といった純娯楽要素から俯瞰から捉えたボクシングのリング、その周囲で唐突に社交ダンスが始まる正方形を取り囲んだ円形運動…凡庸な人間なら一生思いつかないダダイスム演出がすばらしい。

追跡場面で一瞬映るメトロポリスのポスターは内輪ネタかな。
囚人13号

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