ヒロ

青の稲妻のヒロのレビュー・感想・評価

青の稲妻(2002年製作の映画)
5.0
WTO加入、北京オリンピック決定、と急速に成長していく都心部の歓喜と興奮がテレビから垂れ流されている。たが光があれば影もある、いや影があるからこそ光がある。急成長を遂げつつある国に置いていかれた停滞する2人の童貞の不安と焦燥に対する抵抗と乾き。手持ちのすべてを未来に一点掛け、自分が自分であるために勝ち続けなければならない、正しいものが何なのかその答えが解るまで走り続けなければならないゴールのない永続的なマラソン。そして街に呑まれ少し心を許しながら冷たくて乾ききった風に叫び続ける、この映画は「僕が僕であるために」であり「15の夜」であり「Forget-me-not」であり尾崎なのだと思う。この手の系統はめちゃくちゃ好きだけど、やっぱりラストには青春の敗北が待っているわけで、、、この支配から卒業できたのなんてエドワードヤン大先生の『牯嶺街少年殺人事件』ぐらいだし、できてもせいぜいこの支配を拒否(死)することを描いた大島渚の『青春残酷物語』、大半はこの支配への譲歩を描いた今作やホウシャオシェンの『憂鬱な楽園』や『風櫃の少年』あたりが妥当なのだろう。でもこの自分がまだ何者でもないことを自覚していない痛々しさとそれが故の瑞々しさがもう最高、行先もわからず盗んだバイクで走りだしたその成れの果てで映画の神様が微笑んでいた。厨二病SMAP中毒みたいな邦題には目をつぶり御一見あれ。

《中国第六世代の作家たち》
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