ニャンおっ太

ザ・ロードのニャンおっ太のレビュー・感想・評価

ザ・ロード(2009年製作の映画)
5.0
文明崩壊後の近未来、荒廃した大陸をカートを押しながら南に向かって歩く親子の物語は、世界観や設定が「マッドマックス」や「北斗の拳」や「子連れ狼」みたいなんですが、そこから想像出来るような安直な物語ではありません。途轍もなく痛切で、これでもか!と心を掻き毟ります。「はだしのゲン」や大岡昇平「野火」や廃墟の描写はJ.G.バラードのようで。原作はトマス・ピンチョンやドン・デリーロと並ぶ現代アメリカ文学の重鎮のコーマック・マッカーシー(ピューリッツァー賞受賞)。風景と心象の直喩と暗喩や会話を句読点や括弧で区切らない独特の文体と、時間軸を無視した現実と回想と夢を漂流する表現の原作を見事に映画化した監督も素晴らしいけれど、主演のヴィゴが適役過ぎ。音楽がニック・ケイヴ&ウォーレン・エリスのポストクラシカルで、全てに魂が震えます。