モモイ

まわり道のモモイのレビュー・感想・評価

まわり道(1974年製作の映画)
4.8
この作品の「旅」は、ある青年が旅を通じて人と出会い成長していく、というよくある感動的な旅物語ではないし、見ているこちらをワクワクさせる旅でもない。ワクワクどころか暗い。まず視覚的に暗い。(だいたい曇り空)
その上、主人公は独特な顔つきをしていて、とにかく笑顔が小気味悪い。
明るい話題もなく、とりとめのない会話と沈黙の繰り返し。
しかし、この陰鬱とした「旅」に悪い気はしない。
旅行に行ってもパッとせず、どれだけ綺麗な景色を見ても心から感動できない。解放的な気分になれない、結局どこへ行っても同じ場所をグルグルしているような、、目的地があっても、どこにも行き着かない感覚。そんな自分自身の記憶を思い起される。

正直、古い洋館で出会う爺さんの孤独のパラドックスのくだりや、突然出てくる詩的な表現は、なんだそりゃというところもあるが、主人公と旅する仲間たちがこれまた変人揃いで面白い。彼らの不可思議な言動でふっと力が抜ける場面もあり、そのおかげでこの暗くて地味な旅を楽しむことができた。
そして、そんな旅仲間の中で、主人公が初めて出会う大道芸人の少女「ミニョン」の圧倒的存在感に完全に惚れ込んでしまった。
旅の中で彼女はひと言も発さないが、それだけに彼女の魅力が存分に引き出されている。彼女の目には、どのように世界が映っているのだろう。
他の出演作も見てみたいと思った。

私はこの作品の、翳りある空気に包まれたオフビートな味わいがたまらなく好きだ。いつまでも忘れたくないとっておきの一作。
モモイ

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