大筋はあまりにもシンプルな悲哀劇なのだが、それを成立させた異質な物語背景が妙に際立って、この作品のスケールの大きさに思いを馳せてしまう。中国とイングランド。阿片の芳香に満ちた世界観のなかで、リリアン・ギッシュの白さが一段と際立つ。白と黒、陽と陰、明るい光と昏い情念を見事に演出している。
映画技法的に、グリフィスは映画の父と言われるほど圧倒的な存在だ。眼の肥えた文化人にとっては陳腐とすら捉えられかねないようなドラマを、効果的な表現と複雑な時代背景(と意味)の構築によって、芸術たらしめたのかなと思う。
リリアン・ギッシュに惚れた。