ABBAッキオ

疑惑のABBAッキオのレビュー・感想・評価

疑惑(1982年製作の映画)
4.3
 1982年松竹映画。1980年代日本映画の傑作の一つだろう。脚本と主演女優二人の配役が抜群。桃井の怪演が圧倒的だが、凜とした岩下の受けも負けていない。助演陣も好演だが、若い柄本明演じる新聞記者が特に存在感がある。
 容疑者・桃井と弁護士・岩下の最初の面談のシーン。笑顔から蔑みの顔に一瞬で切りかわり、「きらいよあんたの顔」と放つ桃井を、端正な顔で表情を微動だにせず切り返す岩下。自動車事故の真実を隠そうとする証人を時にやさしく、時に厳しく追いつめる岩下だが、その冷静で理知的な性格が邪魔をして、別れた娘への愛情を表現できない。裁判後に桃井と岩下がやり合う場面では桃井がそういう岩下の女としての自信のなさを見透かすように責め立てる。有名なワインかけシーンは互角に見えるが、立ち去る岩下の姿はどことなく敗北感をにじませる。計算された演技なら超絶すばらしい。
 疑惑の容疑者とその弁護士という取り合わせの映画は珍しくないが、本作の面白さは世界レベルの完成度。ハリウッドのトップ女優でリメイクを見てみたい作品。
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