ハレルヤ

イゴールの約束のハレルヤのレビュー・感想・評価

イゴールの約束(1996年製作の映画)
3.9
自動車整備の仕事をしながらその傍ら不法移民の仕事を斡旋してきた父親。息子のイゴールはその手伝いをする日々を過ごしていたが、ある日事故で移民の1人が死亡してしまう。彼から家族を守ってほしいという約束を受けたイゴールは、事故を隠蔽した父親に反発して自分自身を変えていく物語。

奇才ダルデンヌ兄弟の監督デビュー作。既に彼らの他の作品をいくつも鑑賞しましたが、全ての作品に言えるのは圧倒的なリアリティがあること。それもBGMは一切無し。ずっと登場人物たちのそばに寄った手持ちカメラのカメラワークなどの演出があるからこそ。

その土台はこのデビュー作から固めてあり、それを後の作品まで一切ブレずに突き通しています。25年前の作品だからか、粗めの画質もより一層リアルに映し出されているように思えました。

父親役にはオリヴィエ・グルメ。イゴール役にはジェレミー・レニエ。本作後のダルデンヌ兄弟監督作の常連になるこの2人も、監督がずっと使いたくなるのも納得の名演技。

特にジェレミー・レニエは本作では10代の息子役。後の「ある子供」「少年と自転車」では人間として未熟な父親役。年月を重ねて違う立場で演じる彼の演技を比較して見ると、また彼の演技力の凄みがよく分かります。

そしてラスト。かなりの衝撃でした。ダルデンヌ兄弟監督作はどれも「え、ここで終わるの?」と思ってしまうようなところで幕を下ろします。この作品は今後が最も気になるところでいきなりバッサリ切り落とされて、他の作品と比べても一番の驚きでした。

当時リアルタイムで見た人なら、この監督マジ只者じゃないと思ったに違いないでしょう。作品作りの巧さだけでなく、移民問題や父と息子の関係。罪を犯した罪悪感など重いテーマの表現も群を抜いているのが分かります。
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