ハレルヤ

ある画家の数奇な運命のハレルヤのレビュー・感想・評価

ある画家の数奇な運命(2018年製作の映画)
3.9
叔母の影響で芸術を志すようになったクルト。第二次世界大戦、東西ドイツ分断という歴史的な動乱の中で、自らの道を突き進もうとする実話を元にしたヒューマンドラマ。

監督は名作「善き人のためのソナタ」のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナース・マルク。彼の現時点での最新作。3時間の長編ながらもこの監督の作品ならば期待できると思い、鑑賞しました。

絵を描くのが大好きなクルト。芸術性への造詣が深いものの、精神的に問題がある叔母が安楽死という名目で殺害されてしまう過去を持つ。問題のある人間は子孫を持つべきでないという当時のナチス・ドイツの方針が端的に表され、その悲劇に戦慄が走りました。

戦争が終わり、クルトは青年になり東ドイツの芸術学校へ通うも芸術の自由が認められていない国の方針。恋人のエリーと共に西ドイツへと亡命する。しかしエリーの父親は叔母を死に追いやった張本人だった…。

こうして見てみると本当に波乱万丈のクルトの人生。でもそこまで残酷なシーンは無くて、刺激的な場面に頼らずに当時の出来事を通じて、クルトをはじめとする人々の身に降りかかった運命を描いています。

クルトが自らの芸術スタイルを模索する場面は笑いの要素も取り入れていて、見やすさもある。3時間という長さも不思議と感じさせない仕上がりは流石でした。

そしてクルトが模写を通じて投げかけるメッセージは痛烈なもの。派手な場面ではなくとも、心に突き刺さりましたね。

やはり監督の手腕は伊達じゃないなと改めて実感。次回作も楽しみにしたいと思います。
ハレルヤ

ハレルヤ