ペイン

イノセントのペインのレビュー・感想・評価

イノセント(1975年製作の映画)
4.7
北イタリア有数の貴族モドローネ公爵である父を持つ、ゴリゴリの上流階級ルキノ・ヴィスコンティの遺作。

その“お高さ”から、好き嫌いはわかれる監督だとは思うし、現に私も全ての作品を愛してやまないようなファンではなく、どちらかといえばよく比較されるフェデリコ・フェリーニの、モダンアートの明るさと庶民的な俗っぽさが満ち溢れている作風のほうが好きではある。

とはいえ、やはりヴィスコンティにしか作り出せない唯一無二としか言い様のない作品もあり、かの三島由紀夫も大絶賛の『地獄に堕ちた勇者ども』や、『ベニスに死す』の完成度・到達度は世評通りたしかに凄いと思う。

とはいえ、私が一番偏愛しているヴィスコンティ映画は初期の『夏の嵐』という作品で、伊墺戦争を背景にヴェネツィアの公爵夫人とオーストリア軍の将校との破滅的な恋を描いた作品なのだが、遺作である本作『イノセント』もかなり『夏の嵐』と通ずる部分のある倦怠カップル映画でたいへんに好物だった。

前作『家族の肖像』が私的には少し退屈だったが、遺作である本作はどこか原点回帰したようなフレッシュさと、巨匠の円熟味が加味されたような凄い作品で、もっと評価されてもいいと思う。ヴィッヴィッドな赤の色使いはベルイマンの『叫びとささやき』を彷彿させる部分もあり、またマーティン・スコセッシが1993年に手掛けた『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』はもろに本作へのオマージュ全快。『青い体験』のラウラ・アントネッリのヒロインとしての魅力も抜群。
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