似太郎

イノセントの似太郎のレビュー・感想・評価

イノセント(1975年製作の映画)
5.0
貴族の没落と退廃…。生涯に渡ってそんなテーマを一徹させたルキノ・ヴィスコンティ監督の不穏な遺作。全編に渡り醜悪な人間模様が描かれる。

個人的に名作の誉れ高い『ベニスに死す』も『山猫』も「ふ〜ん」て感じでしかなかった私が初めて心から「素晴らしい!」と思ったヴィスコンティ作品が本作である。

主演のジャンカルロ・ジャンニーニが神経症的スケベ人間を演じていて一歩間違えるとコメディになりそうなドロドロな展開も全く違和感無く観れる。不倫と愛憎と嫉妬のてんこ盛り🤮。

衝撃のラストシーンはある意味ルイ・マルの『鬼火』や北野武の『ソナチネ』よりも潔いと感じる。その極端にナルシスティック(自己愛性パーソナリティ的)な世界観はここまで来ると完全にエンタメへと昇華されるのだ。(笑)

惜しむらくは顔と体のアップがやたら多い点とズーミング撮影が鬱陶しい所だろうか…? 美術と衣装とスコアはほぼ完璧な達成度でさすがは巨匠。この内容なら尺の長さも丁度良いと思った。好き嫌いの別れそうな映画だが、私は大いに支持したい❗️🤗
似太郎

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