ジジイ

女は二度生まれるのジジイのレビュー・感想・評価

女は二度生まれる(1961年製作の映画)
4.0
九段界隈と言えば靖国神社、日本武道館、千鳥ヶ淵などのイメージであるが、昭和初期まで新橋、神楽坂に並ぶ花柳界として栄えた場所であったらしい。芸のない芸者として客に身体を売りながら日銭を稼いでいる小えんを若尾文子が明るく演じている。映画は情欲にまみれる男女の姿をあっけらかんと描くが、妙に後を引く作品である。






以下ネタバレです。






山村聰が珍しくギラギラした人物を演じていて新鮮だった。バーで若尾と山村が踊るシーンの直後にもう囲われた若尾のアパートの部屋が登場してハッとした。時折聞こえてくる靖国神社の太鼓の音が不穏。大学生だった牧こと藤巻潤、岡惚れした寿司職人フランキー堺、十代の恋人など小えんの奔放な恋愛が楽しい。山村にぞっこんだったかと思えば、形見の時計をいとも簡単に若者に渡す薄情さ。再会に胸をときめかせた牧が、外国人の接待に小えんを利用しようとする残酷さ。それにもめげずにラスト、青年をほったらかして信州の駅に佇む小えんは何か企んでいるようで頼もしくもあり怖しくもある。山村の娘に塩をぶつけるシーンの強烈さよ。
ジジイ

ジジイ