ホーガン

4匹の蝿のホーガンのレビュー・感想・評価

4匹の蝿(1971年製作の映画)
3.2
敬愛すべきダリオ・アルジェントの過去作から順番に再鑑賞、レビューしてみようのコーナー。その第三弾。本作と「歓びの毒牙」、「わたしは目撃者」が所謂「動物三部作」と呼ばれている。原題に動物(鳥や虫を含む)を含むからね。この三部作はいずれもジャーロと呼ばれるジャンルで、よく見てみればその後の傑作に繋がるアイデアが含まれている。

ミュージシャンが主人公というのは「サスペリアPART2」と同じ。本作がドラマーで「サスペリアPART2」がピアニスト、プロローグでセッションシーンがあるのも同じ。また、殺人者の壮絶な死に方で映画が終わるというのも前作の「わたしは目撃者」、さらには「サスペリアPART2」とも同じだ。本作では事故によって首が飛ぶシーンをスローモーションで描写している。ラストの事故シーンに匹敵する印象的なシーンとしては主人公が夢で見る処刑シーンがある。サウジアラビアの処刑で首をはねるとき、アイスピックを首筋に刺して首を硬直させてから刀で切り落とすという話を主人公が友人から聞いたことをきっかけにそれが夢で何度も再現されている。白昼の広場での処刑シーンはなかなかインパクトはある。

まあ典型的なダリオジャーロで、前作同様、ミステリー部分には重きが置かれていない。ダリオがどこでアイデアを思い付いたのかは分からないけど、殺害された被害者の眼球から最後に見たものが分かるというトンデモ技術が開発されていて、そこに写った映像が4匹の蠅だった、というところから本タイトルが生まれている。前作では犯罪者は特別な染色体情報を持っているというトンデモ情報が物語の鍵になっていたが、「フェノミナ」ではもう少し洗練され、遺体に群がるウジ虫によって死亡時期が分かるという技術が利用された。こちらはリアルっぽいけどね。動物三部作では粗いが、こういうジャストアイデアを利用するのもダリオジャーロの特徴とも言えるだろう。

物語上どうでも良いキャラクタだけど「神様」と呼ばれる人が登場したときには盛大に「ハレルヤー」が歌われたり、これも物語に1mmも伏線にもなっていない郵便配達員の話があったり、物語に無理に笑いを盛り込もうとしているのは謎。「サスペリアPART2」でも主人公とダリア・ニコロディ演じる記者との間で妙に笑いを取ろうとしている。でも、この変なコミカルさは「サスペリアPART2」より後の作品ではあまり見られない。

本作もぶっちゃけあまり面白くは無くて「わたしは目撃者」と同様、何度も眠気に誘われて何度も巻き戻した。というわけで、これで動物三部作は終わり、コメディの「ビッグ・ファイブ・デイ」を挟んで4年後の1975年にジャーロの傑作「サスペリアPART2」を完成させる。
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