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テルマ&ルイーズの教授のレビュー・感想・評価

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)
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大傑作。
ストーリーを「物語る」というテクニックだけを見ても秀逸。
事件の発端になる「拳銃」の組み込み方。
テルマ(ジーナ・デイビス)とルイーズ(スーザン・サランドン)の冒頭段階でのキャラクターをほぼ一瞬で描いてみせるエピソードづくり。
作中における「男性」の扱われ方の設定の提示などは、時代が追いついた感のあるような「先見性」が見える。
※とはいえ、リドリー・スコット監督は初期作品から一貫している。

まず。キャスティングが完璧。
ジーナ・デイビスもスーザン・サランドンも凸凹コンビという風合いや、しっかりコメディ的な演技を見せたり、シリアスなトーンももちろん見事で、その振り幅で見事。弱さを抱えつつ自己を発見する、それを遮るものへの抵抗を丁寧に演じている。

男性陣も、絶妙な配置。
冒頭からテルマの夫、ダリル(クリストファー・マクドナルド)の絵に描いたようなトキシックさ。これが「ダメな男(あるいは夫)」に留まっていたのが当時の男性観ではあったが、それが厳然と「暴力的」であったことを示しているという先見性。
テルマをレイプしようとした男を殺害するシーンについても、作劇上の「道理」をクドクドと最後まで説明せずに、手際の良さでグイグイ見せていく。
見た目だけで完成しているハル刑事(ハーヴェイ・カイテル)に、ミスリードがたまらなく効いているジミー(マイケル・マドセン)、これまたミスリードを誘うJD(ブラッド・ピット)など見事過ぎる適材適所。

メッセージやテーマに対して、テルマの「女性らしさ」を内面化していた姿からの「自己発見」。
ルイーズの過去を秘めつつ、苦しみを閉じ込めながらも自分たちが虐げられた存在であることに自覚的で戦おうとする姿勢を崩さない姿。
それを互いで補完し合うようなキャラクター設定や描写が見事。

ラストはあまりにも切ないけれど、撮影も編集も、物語の構成や展開も、俳優たちの演技や配役も全てのピースがハマった傑作。
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