尿道流れ者

ゆきゆきて、神軍の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
4.3
衝撃的な映画。戦争という特殊な状況下では暴力が特例的に容認されているが、その理不尽な暴力の被害者の弔いのため、少しでも加害者に回ったものを真実とその天罰の認識のため奥崎が暴れまわる。国同士の戦争とはまた違う法の網からすり抜けた人間性の欠如による暴力こそが戦争中に起きる恥ずべき暴力であって、それは学んだ戦争からは伝わらないものである。そこを剥き出しにすることで戦争の悲劇を 生々しく伝えるのと同時に、戦争を産んだ人々や加害者でありながら、ただ戦争の被害者であろうとする者たちを叩き、戦争が繰り返されないために戦う。法律ではなく本当に信ずるべきもののために奥崎は暴力で真実を暴こうとする。観ていくうちに奥崎の振るう暴力を容認にしてしまい、真実のため戦う奥崎を応援してしまうが、最後に暴力自体への嫌悪を観ている側にはっきりと示す展開でハッとさせられる。

壮絶なドキュメンタリーだが映画としての面白さもあり、笑ってしまう場面や、海の美しさに涙腺が緩む場面もあって、楽しく観れる。凄まじい映画。