イルーナ

マラドーナのイルーナのレビュー・感想・評価

マラドーナ(2008年製作の映画)
3.8
2021年一発目のレビューはこれで。
サッカー界、いやスポーツの域を超えたレジェンド中のレジェンドにして最大の問題児、ディエゴ・マラドーナ。様々なものに例えられる一方、唯一無二の存在であるゆえに、ぴったりと当てはまるような語彙は存在しない……
昨年の暮れに亡くなったことから、改めて彼の人生や人となりについて調べる中、この作品を約10年ぶりに再鑑賞。

しかしこの作品、大好きな選手を題材にしている割に細かい内容があまり思い出せなくて、なぜだろう?と思っていました。
今回改めて観てみると、一つのエピソードをまっすぐに展開するのではなく、複数のエピソードが入り乱れながら進んでいく形式になっており、一筋縄ではいかない。それで印象が分散されてしまったのかな?と思ったり。内容もどちらかというと政治的な話がメインで、サッカーの話や名プレー目当てで見ると肩透かしを食らうかもしれません。

それでも、マラドーナ教(!?)やテーマソング『La mano de Dios(神の手)』など、これで初めて知った要素も多いです。
すごいですよね2つとも。マラドーナ教、この名前だけで日本人の感覚だと吹き出してしまうし、教義もネタとしか思えない。他のドキュメンタリーを観たら、双子の女の子に「マラちゃん」「ドーナちゃん」なんて名付けた親すら存在する!しかし大真面目に信仰されているし、それだけ偉大な存在なんですね……
反則行為をタイトルに持つテーマソングも、冷静に考えて日本じゃありえない。しかし陽気なラテンのリズムに美しく哀切なバンドネオンの音色が重なり、まさにマラドーナの人柄や人生を見事に表現した名曲(調べたら作曲者のRodrigo、2000年に事故で27歳の若さで他界していた……)。しかも本作で登場するのは、まさかのご本人ライブ!
文化の違いがひしひしと感じられます。
また、日本でもかつて配信されていた『10番の夜』の映像を久々に見られたのもうれしい限りです。

あと、クストリッツァ監督が自らの作品にマラドーナを重ねている通り、様々な作品の場面が挿入されています。自らもバンドやっていたり、ゴールを決めたり、面白い方だなぁ。これを観て、クストリッツァ監督の他の作品も観てみたくなりました。
にしても、セルジオ・レオーネやサム・ペキンパー監督の、マラドーナ主演映画……いろいろな意味で恐ろしい作品になりそうです(笑)
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