イルーナ

リトル・ショップ・オブ・ホラーズのイルーナのレビュー・感想・評価

3.8
【追悼ロジャー・コーマン】

今年5月9日、伝説の映画人ロジャー・コーマンが98歳の大往生。
彼の元から名だたる俳優・映画監督が育った話はあまりにも有名で、彼がいなければ間違いなく今の映画界はなかったと言っても過言ではないほどの偉人です。
私自身も少し前に『アッシャー家の崩壊』を観てたからショックでした。
そして、3月にこの『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』をジョー・ダンテ監督・自身のプロデュースで再リメイクする話があったばかり。
ついこの前までこういう話が上がるくらいに元気だったのに……

コーマンの代表作の一つである本作は、予算たったの3万ドルかつ、『血のバケツ』のセットを流用してわずか2日間で撮影されました。
しかも口コミでカルト的な人気を集め、オフ・ブロードウェイでミュージカル化されて大当たり。ついにはハリウッド大作としてリメイクされたという、まさに伝説の作品。
手書きのスキッド・ロウの町並みをパンしていくOPからしてオシャレです。
新種の植物を展示したことで花屋は繁盛したが、そいつの正体は人食い植物だった……というシンプルなストーリーながら、登場人物全員変人。
常連客は身内がやたら死にまくってたり、花を美しく飾るためでなく自分が食べるために買ってるし、近所の歯科医はドSで患者はドM。
しかもドMの患者役は若き日のジャック・ニコルソン。
そのせいで人が死んでもまったく怖さがないwタイトルにもあるように一応ホラーなのに。
「誰もが恐れる町」と呼ばれてますが、それは犯罪率うんぬんより、住人に変人が集中しているせいなのでは……w
そして人食い植物のオードリー・ジュニアは、手作り感あふれるチープさがかわいい。「ギ~ブミ~」と餌をねだってくる所も、人によっては庇護欲を刺激される……かも。
パックンフラワーの大先輩な風貌もさることながら、発見者は何と日本人w日本人の庭師から種を貰って育てたとのことですが、当時の日本人ってそういうイメージだったのか……
さらに花が食べた人間の顔になっているのは、『デビルマン』のジンメンを思わせる。というか、もしかして元ネタ?!
ちなみに『へんないきもの』作者の早川いくを氏はオオグチボヤのことを「リトル・ショップ・オブ・ホラーズの人食い植物にちょっと似ている」と仰ってましたが、そのチョイス渋すぎない?

そんなインパクト大の本作ですが、当のコーマンは、
「こんなに奇抜で変わった映画には平凡な成功は似合わない。大ヒットか大失敗のどちらかでなければならない。3万ドルの経費を埋めて少々の利益が残ったというだけではガッカリする」
たった2日で作った作品で元が取れたんだから、十分誇ってもいいのに……
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